“マンガ原作者の仕事”にスポットを当て、なぜマンガ原作者という仕事を選んだのか、どんな理由でマンガの原作を手がけることになったのか、実際どのようにマンガ制作に関わっているのかといった疑問に、現在活躍中のマンガ原作者に答えてもらう当コラム。原作者として彼らが手がけたプロット・ネームと完成原稿を比較し、“マンガ原作者の仕事”の奥深さに迫る。
第13回には少年ジャンプ+連載中で、2024年1月からTVアニメの放送も始まる「姫様“拷問”の時間です」の原作者・春原ロビンソンが登場。自分の画力では描きたいマンガが描けない、そう考えたのがマンガ原作をするきっかけだったと語る春原が、原作担当の魅力やシナリオ・ネーム作業へのこだわりなどを明かしてくれた。
構成 / 増田桃子
「姫様“拷問”の時間です」のシナリオ・ネームについて
シナリオ→ミニネーム→ネームという順番で作業をしています。
シナリオはまず勢いに任せて思いつくままに書いてしまい、その後、ちまちまとオチに対するフリを序盤に追加したり、形を整えます。次のミニネームでは主にコマ割りを考えますが、同時にここでも「左上に決めゴマをもってきたいから、セリフの順番を替えよう」など、シナリオもけっこういじっています。最後にネーム。ここも実際の大きさの絵を見ながら「このセリフは短くしたほうが見栄えがいいな」とか、逆に「すこし文字を足して改行がキレイになるようにしよう」など考えながらセリフをいじったりしています。
例えば、この201話の冒頭シーンのシナリオにある「そんな とんこつラーメンに存在するのか?あっさりが!」「ふふっ存在するのですよ」というセリフ。『存在』という単語がかぶっているし、もっと短くまとめられるなと思い、ミニネームの段階で「ふふっあっさり系もあるのですよ」というセリフに変えました。
この3つの作業をボクが重要だと思う1番の理由は、同じ物語を3回、別の角度から見られるからです。毎話、この作業を通して、完成までに何度もシナリオをいじっていますが、別角度から見直すことで改善点が見つかっていき、話がよくなっていくんです。昔はいきなりネームを描くタイプだったのですが、それだと一度最後まで描き切ると満足して、そこで完成した気分になってしまっていました。だから編集さんからボツやらネーム修正の指示が多かったのだと思います。
学校のテストだって解き終わった後に見直すことが大切じゃないですか。それと同じです。ボクは学校のテストは見直さず問題用紙の裏に落書きしていましたけど。
マンガ原作者として仕事を始めるに至った経緯
「ガッツリとしたストーリーマンガを描きたい!」と思い、しかし、そのときに考えていた話はボクの画力では描けないと思ったので「原作をやってみたい」と希望しました。
それ以降は特に何も言ってないのですが、連載に向けた打ち合わせをしている中で「作画はこの人がいいと思うのですが……」と提案されるようになり、いつのまにか原作ネームを描く人になっていました。
原作担当として最もこだわっている作業
作業工程に含まれてないかもしれないですが、経験と閃きを重要視しています。
満腹の状態でも「この食品でネタが思いつきそうだ」という物を見かけたら食べますし、「そういえば人生でここ行ったことない」や「これやったことない」ということはできる限り行ったりやったりするようにしています。今はスカイダイビングを経験したいのですけど、全然やりたくはないです。
マンガ原作者という仕事の魅力
自分ひとりでは形にできない表現を形にできます。
マンガ原作者を目指す人へのメッセージ
若いマンガ家志望者の中には、イキナリ「原作志望です」と言う人がいますが、まずは自分で作画までやったほうがいいと思います。
作画まで経験すると、どんな作業が作画家さんにとって大変なのかを理解できるので、原作をやるうえでも役に立つんです。「ここそんな重要なシーンじゃないけど作画カロリー高いな、ここはもっと簡単な絵でできるシーンに変えて、こっちの見せ場をがんばってもらおう」みたいなことを考えて調整ができます。そしてなにより、もしかしたらアナタにメチャクチャ絵の才能があるかもしれない! 今はヘタでも、描いているうちに絵がうまくなるかもしれない。スタート段階から「原作者志望です!」って人はもったいないな~と思います。
春原ロビンソン(ハルハラロビンソン)
1986年3月12日生まれ。アニメ会社で制作進行などを経験したのち、ニコニコ静画内のニコニコ漫画で連載した「戦勇。」で連載デビューする。 2019年4月より少年ジャンプ+で「姫様“拷問”の時間です」(作画・ひらけい)を連載開始。最新13巻が2024年1月4日に発売。またTVアニメが1月8日(月)24時からTOKYO MX、BS11にて放送される(※関西テレビは1月14日(日)26:29~)。