岡田麿里監督による劇場アニメ「アリスとテレスのまぼろし工場」の公開記念舞台挨拶が、本日9月16日に東京・新宿ピカデリーで開催された。
昨日9月15日に全国公開された「アリスとテレスのまぼろし工場」は、MAPPAが手がける初のオリジナル劇場アニメーション。製鉄所の爆発事故により時が止まってしまった町を舞台に、未来へともがく少年少女たちの物語が展開される。本日の舞台挨拶には菊入正宗役の榎木淳弥、佐上睦実役の上田麗奈、五実役の久野美咲、菊入昭宗役の瀬戸康史、菊入時宗役の林遣都、監督の岡田麿里が登壇した。
岡田監督は「3カ月前には完成すると思っていなかったので、本当に今、“まぼろし”感がすごい。感動しています」としみじみ。家族のことや将来の夢、抑えつけた恋心などさまざまな葛藤を抱えている主人公・正宗を演じた榎木は、「時が止まってしまって、変わってはいけないという設定はファンタジーだが、現実世界でも押さえつけられる場面って学校や社会とかでもあると思う。僕も違うことをやりたくても『同じようにしろ』と言われたことがある」「正宗はこの世界のどこかにいそうな人物像、リアリティがある」と話す。
周囲から控えめで優しい女子だと思われているが、本当は気が強い睦実を演じた上田。「私も14歳だった頃、自分の本当の気持ちを出せなかった。嫌われるのが嫌で」と睦実との共通点を明かし、彼女の魅力を「周りからみたらミステリアスと思われる、無駄なアンニュイさを出しているけれども、出そうと思って出していないところ」と語る。
製鉄所に閉じ込められている野生の狼のような少女・五実を演じた久野は「五実は純真無垢で世界のことを何も知らなくて、真っ白な状態の女の子。でも、正宗や睦実と関わることで心が動き出して、変わっていく表現を心がけた」とコメント。PVにも収められた、感情を爆発させ泣き叫ぶシーンについては「泣き叫ぶシーンは感情が一番爆発するシーン。初めての経験をしてどうしたらいいのかわからない葛藤、どうしようもない気持ちを込めて叫んだ」と収録を振り返った。
かねてよりアニメ好きで、同作で声優デビューを果たした瀬戸。「声優陣の皆さんがしゃべるたび、“あの声だ”とワクワクする! 客席に座りたいくらい!」と声を弾ませるも、自身の出演については「逆に僕で大丈夫なのかと……。皆さんがどんな反応をするのかドキドキしている……」と不安げな様子を見せる。すると岡田監督が「大丈夫です!」と太鼓判を押し、林も「瀬戸さんすごいなって思った」と称賛。観客からも割れんばかりの拍手が送られると、これに安堵したのか瀬戸は「前向きに声優のお仕事をやっていきたい。MAPPAさん、よろしくお願いいたします!(笑)」と茶目っ気たっぷりにアピールする。林は自身演じる正宗の叔父・時宗の魅力について「守りたいもののために自分を犠牲にしているところ」と紹介した。
キャストには特に細かいディレクションをしなかったという岡田監督。「キャラクターを作るうえで、皆さんの演技を画に活かしたいと思った。皆さんには思うようにやっていただいて、そのパワーにスタッフが影響を受けて、それをまた画にして、とキャッチボールできたらいいなと。刺激がある演技をしていただいて感謝している。声をやっていただいたというより、皆さんには一緒にキャラクターを生み出していただいた」と感謝する。
イベントでは映画のストーリーにちなみ、それぞれ将来の夢を発表する一幕も。榎木は「どれだけ社会的に成功しても孤独死は嫌」という理由で、「家族に囲まれて死ぬこと」と答える。猫を飼っている上田は「猫ちゃんと一緒になるべくハッピーに暮らす」と、久野は「毎日笑顔でのんびり暮らすこと」と回答。瀬戸は前者3人の夢をひっくるめたかのように「幸せに暮らす」と発表し、会場の笑いを誘う。そんな中、少し気まずそうに林が「リニア中央新幹線に乗りたい」と少年のような夢を披露。岡田監督は「何十年先もアニメを作っていたい!!」と答え、会場からは自然と大きな拍手が湧いた。
最後に、観客に向けて岡田監督が挨拶。「喜びも苦しみも全部『アリスとテレスのまぼろし工場』の中にある数年でした。皆さんに観てもらえてうれしく思っています。一緒に作品を作ってきた人たちとまた新しい夢を見て、皆さんに観ていただけたらうれしいです」と感謝の気持ちを伝え、イベントを締め括った。
映画「アリスとテレスのまぼろし工場」
スタッフ・キャスト
監督・脚本:岡田麿里
副監督:平松禎史
キャラクターデザイン:石井百合子
美術監督:東地和生
音楽:横山克
制作:MAPPA
配給:ワーナー・ブラザース映画、MAPPA
出演:榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲、八代拓、畠中祐、小林大紀、齋藤彩夏、河瀬茉希、藤井ゆきよ、佐藤せつじ、林遣都、瀬戸康史
(c)新見伏製鐵保存会