TVアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のイベント「『機動戦士ガンダム 水星の魔女』フェス ~アスティカシア全校集会~」が、去る8月6日に千葉・幕張メッセ国際展示場で開催された。このレポートでは、昼公演の模様をお届けする。
放送のたびに関連ワードがトレンド入りするなど話題になり、7月2日に最終回を迎えた「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。その放送後最初の大型イベントである今回の「アスティカシア全校集会」は、ホール3つを使った大規模なものに。イベントの大半を生アフレコと朗読が占めるという豪華な内容に加え、アーティストによるライブやオーケストラの生演奏と盛りだくさんの構成で観客を楽しませた。
市ノ瀬加那演じるスレッタの朗読でイベントが幕を開けると、ミオリネを喜ばせる催しを“全校集会”で用意しているというスレッタが、ミオリネを全校集会に誘おうとするストーリーが進行。パリピ風にイベントへ誘う練習を始めるスレッタの姿にさっそく笑いが起こった。そんなスレッタがLynn演じるミオリネに嗜められたあとは、阿座上洋平演じるグエルのキャンプに、大塚剛央演じるラウダが訪れるというシーンを展開。兄愛に溢れるラウダが、グエルのキャンプ料理を絶賛し、スレッタに過剰に嫉妬する演技がさらに笑いを加速させた。
デリングの「お前たちが考えている以上にこのイベントは楽しい」というまさかの開会宣言があったかと思えば、洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団のオーケストラ生演奏による「Asticassia」が、これから始まる“お祭り”への期待感をさらに高めた。シャディク役の古川慎、ニカ役の宮本侑芽、チュチュ役の富田美憂の個性溢れる掛け合いの後には、本編後半で重要な役割を担ったソフィ役の井澤詩織、ノレア役の悠木碧も登場し、劇中で悲劇的な死を遂げた2人の姿に、会場から大きな拍手が起こった。ノレアとソフィの2人は辛辣な言葉遣いで拍手を煽ったり、過激な株式会社ガンダムの社歌の替え歌を披露したりと、会場をかき回した。
名場面の振り返りなど集大成イベントに相応しい内容の朗読とともにステージ上のスクリーンには場面カットも上映。株式会社ガンダム設立時のセリフ「守るわよ、私があんたを」を、ミオリネが力強く放ち会場を沸かせる一方で、シャディクはスレッタがミオリネに用意していた催しが「みんなで歌おう 株式会社ガンダム社歌」であるとわかると、ノリノリで社歌の替え歌を歌い、大きな拍手と笑いを生んだ。
「水星の魔女」で決して欠かせない要素が“決闘”。物語の中で幾度も死闘が繰り広げられてきたが、この日のイベントでも、朗読の中に盛り込まれた決闘と称したミニゲームコーナーでキャストが火花を散らす。内容は自分の演じるキャラクターの「人には見せられないやりたいことリスト第1位」を発表するというもの。市ノ瀬、大塚、悠木、富田、古川がゲームに参加し、決闘らしく立会人として阿座上が判定者を務めた。
おなじみの決闘の前の名乗りは、「勝敗は声優の芸歴のみで決まらず、声優の滑舌のみで決まらず。ただ結果のみが真実」と本家をオマージュする手の込みよう。各声優たちが考えている、キャラクターのやりたいこととしてノレアは「ソフィのやりたいこと私も一緒にやりたい」としおらしく発表し、会場から多くの拍手を集める。勝利したシャディクは「真っ赤な僕になって君にかじられたい」と、本編で青いトマトをミオリネが切り落とすシーンに絡めたセリフで披露。古川の演技や、その前に朗読劇でネタにされていたこともあり、キャスト陣も大きな笑い声を上げていた。
シユイによるアニメSeason1のエンディングテーマ「君よ 気高くあれ」。では、会場中をシユイが乗ったトロッコが巡り、ライブでもファンを魅了する。また朗読の合間に挟まれた“休み時間トーク”には、宮本、富田、井澤、悠木が登場。井澤が「パーメットスコア今いくつですか?」と、会場の盛り上がりを例え、悠木は作中で暴力を振るったニカ役の宮本に「本当にごめん(笑)」と謝罪する。
この4人が意外なメンバーという話題から宮本が「ニカとチュチュも久しぶり」と話すと、再会を喜んだ富田が宮本に抱きつく場面も。また富田は自身の演じるチュチュのヤンキー座りを披露。みんなから、スカートを心配される中「衣装さんとスカートの中が見えない角度を確認した」と、イベントでヤンキー座りを披露するための隠れた努力を明かした。さらにSeason1オープニングテーマ「祝福」を歌ったYOASOBIからのサプライズメッセージも届き会場からどよめきが起こった。
イベント後半は、笑いの絶えなかった前半と打って変わって、キャスト陣の熱演が光る生アフレコと圧巻のライブで構成。前半パートの生アフレコでは、1話のスレッタとミオリネの出会い、グエルやエラン、シャディクとの決闘など、主にSeason1の名場面が次々と再現される。第1話ラストの「水星ってお堅いのね」など名セリフももちろん登場。グエルがスレッタに言った「俺と結婚してくれ」のセリフでは、阿座上が映像のグエルと同じく片膝をついてアフレコし会場を沸かせた。
またここでもサプライズを用意。プロスペラ役の能登麻美子が登場すると、驚きと感嘆の声が漏れる。さらに、スレッタのことを小さい子供をあやすようにけしかけるプロスペラ、図らずも父を殺めてしまったグエルの嘆き、ミオリネを助けるために人を殺めるスレッタなどSeason1ラストの衝撃のシーンに重なるように、クララ・ソラーチェのコーラスが響き、合わせてオーケストラの演奏が始まると、会場中が息をのみステージを見つめた。
このパートのラストでは、プロスペラが愛する娘・エリクトのために、スレッタを突き放すシーンを能登が、怪しく力強く演じ切る。「スレッタは自由に生きていいのよね」とスレッタへの愛ものぞかせるセリフで会場の空気を変えたかと思えば、アイナがSeason2 エンディングテーマである「Red:birthmark」を力強く歌い上げ、会場をさらにエモーショナルな雰囲気に包んだ。
合間のトークコーナーに登場した古川は「ずるいんだよ! キャンプやるだけであんなに沸くとか(笑)」と、序盤に登場したグエルのキャンプシーンの盛り上がりに驚いた様子。自身もキャンプが好きだという阿座上は、キャンプシーンの放送当日もキャンプしていたことを明かしていた。またグエルがボブの偽名で働いていたことをイジる古川は「今日はボブだなって日はないの?」と阿座上に投げかけ、「いい映画見た日はボブ」と阿座上も心が安らぐときはボブになると答えた。
生アフレコ後半はyamaによるSeason2オープニングテーマ「slash」からスタート。生アフレコでは、グエルとの戦いの中での思いが溢れるシャディク、ノレアを必死で説得するエラン、精神的に成長したチュチュのニカとの和解、スレッタの呼びかけで立ち直るミオリネといった終盤の重要な場面が、生演奏と相まって放送時の感動を呼び起こす。そしてガンダム・キャリバーンに乗り込むスレッタを楽曲「Liberation from the Curse」が盛り立てる。ラウダとグエル、スレッタとエリクト、プロスペラ、2組の家族がそれぞれぶつかり、わかりあう姿がキャスト陣の魂の叫びによってファンの心に響き、万雷の拍手が会場に鳴り響いた。
生アフレコが終わると、アイナが挿入歌「宝石の日々」を最終回の映像に合わせて歌唱。裸足でステージを駆け回り、ファンの視線を引きつけた。エンディングではキャスト、アーティスト、音楽を手がけた大間々昂、劇伴にボイスで参加したクララ・ソラーチェも挨拶。サプライズでの登場となった能登は「感無量」と一言。「皆さんと一つの空間を作れて幸せです」と笑顔を見せた。Lynnは「一生忘れられない瞬間を味わっているなと感じました」としみじみと朗読劇を振り返る。会場を見渡した市ノ瀬は約1万人というファンの多さに感動しつつ「一人一人の愛情や思いが伝わってくる」とファンへ伝える。さらに「永遠にこの作品が皆さんの心に残りますように」と呼びかけ、客席からも同意の拍手が返ってきた。
イベントは大団円を迎えたかと思いきや、まだまだファンを喜ばせる仕掛けが。グエルとシャディクがしんみりした雰囲気に割って入り、朗読劇へなんとか流れを戻そうと、迫真の演技で話し合う。シャディクの提案を受けたグエルが、ステージ暗転からのカウントダウンで始まるという力づくの方法で、なんとか朗読劇を再開させた。
ラストの朗読劇パートでは、観客を立たせ、市ノ瀬とLynn、さらにエアリアルの着ぐるみがトロッコで会場を移動する中、「ガンダム ガンダム 希望の光~」と、株式会社ガンダム社歌をオーケストラの演奏をバックに出演者が熱唱。キャストの呼びかけを受け、約1万人のファンも大合唱に加わり盛り上がりが最高潮に達した。
そして、再びLynnと市ノ瀬が前へ。感極まり、涙を見せる市ノ瀬だったが、大勢のファンの応援を受け、改めて作品へ向けられた愛を実感。最後には市ノ瀬の音頭で「目一杯の祝福を」「みんなに!」とキャストが叫ぶ形でイベントを締め括った。
またイベントでは、この日出演が叶わなかった花江夏樹演じるエラン3人が、イベントの心得を場面カットを交えながら笑いありで紹介。キャスト退場の際も、「祝福」の楽曲とともにクレジットが流れるという演出が、最終回を思わせる。さらにキャスト退場後にもミオリネからスレッタへ「ホルダーとか関係なく、あんたは私のパートナーなんだから。胸張りなさい」というセリフが用意されるなど、最後の最後までファンを楽しませた。
ステージ以外にも、1ホールをまるまる使った展示・コスプレ・物販スペースも展開。大勢のファンが押しかけ、最終回までの貴重な制作資料、ノレアが手帳に描いていたイラストを思わせるコンセプトアート、“懺悔室”の名前でファンの間で親しまれるセセリアのカウンセリングシーンの立体展示などに多くの人が足を止めていた。
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