楠本まきの展覧会「『線と言葉・楠本まきの仕事』展」が、本日10月1日から12月25日まで東京・弥生美術館で開催される。これに先がけ、去る9月30日には内覧会が行われた。
「『線と言葉・楠本まきの仕事』展」は楠本の38年にわたる仕事の軌跡をたどりながら、作品の美しい世界に迫る展覧会。京都・京都国際マンガミュージアムで昨年開催された展覧会の巡回で、今会場からの新たな展示作品もお目見えする。
展示は「線と言葉」「デカダンス」「スタイルアイコン」「間にあるもの」「パーフェクショニスト」「ノンコンフォーミスト」というテーマで構成。”研ぎ澄まされた線と言葉”にフォーカスを当てた「線と言葉」では、「致死量ドーリス」と「戀愛譚」の印象的なシーンとそのセリフが原稿やパネル、実物の本を通して紹介される。天井から垂らされた薄い布幕には、「戀愛譚」より運命の恋人でありながら出会いを果たさないまま終わった猫目丸と新月がプリントされた。
「デカダンス」では “耽美で退廃的、デカダントでゴシック”な「Kの葬列」の原稿や習作を展示。“スタイリッシュであり、前衛的な作品群”という枠組みの「スタイルアイコン」では、「KISSxxxx」の中で小道具として描かれた時計、カノンの腕輪、かめのが着用していたヘッドドレスが展示されている。また「いかさま海亀のスープ」の原稿や下絵、楠本の卵コレクションのうち「eggnog」のモチーフにもなった大理石の卵も飾られた。
「間にあるもの」ではエッチング作品、レコードコレクション、楠本が使用している製図ペンのニブなどを展示。読者プレゼントのために楠本が手作りしたクリスマスカードや、映画「オスカー・ワイルド」の日本版パンフレット用に描いた挿絵も登場した。「パーフェクショニスト」では楠本作品のこだわりの装丁を紹介。0.1mm単位で指定が入れられた構成紙をはじめ、装丁のラフスケッチ、ブックデザイナーとやりとりしたファックス紙までも並べられた。
次のフロアに続く階段では、色とりどりのフライヤーが壁を埋め尽くす。そのフライヤーは「Kissxxxx」に登場するバンド・DIE KUSSEのライブ告知という設定で、日程や会場まで細かく書かれている。「ノンコンフォーミスト」ではメジャーな少女マンガ雑誌の連載作品でありながら、楠本が新たな表現に挑戦した「Kissxxxx」と「赤白つるばみ・裏/火星は錆でできていて赤いのだ」の原画を展示。「Kissxxxx」のイメージビデオとともに、イメージビデオのために制作されたスライドが再構成されて上映された。
なお原画の一部は、1カ月ごとに展示替えが行われるとのこと。併設する竹久夢二美術館の「萩原朔太郎大全 2022」コーナーでも、好きな詩人として朔太郎の名を挙げていた楠本が、作品内で朔太郎の詩を引用したページの原稿が公開される。
「『線と言葉・楠本まきの仕事』展」
日程:2022年10月1日(土)~12月25日(日)
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(※10月10日開館、10月11日休館)
会場:東京都 弥生美術館