吾峠呼世晴原作による「能 狂言『鬼滅の刃』」が昨日7月26日に東京・観世能楽堂で開幕した。本記事では公演に先がけて行われたゲネプロの模様をレポートする。なおネタバレを含むため、未鑑賞の人はご注意を。
「能 狂言『鬼滅の刃』」では主に原作第1巻から第5巻までのエピソードがピックアップされ、五番立の形式で展開されていく。“ヒノカミ神楽”をテーマにした祝祭儀礼「日の神」で始まり、狭霧山を舞台にした脇能「狭霧童子」へ。さらに鬼殺隊に入るための最終選別に挑む炭治郎を描いた修羅能「藤襲山」、禰豆子にフォーカスした鬘能「白雪」、善逸と伊之助が活躍する雑能「君がため」、那田蜘蛛山のエピソードを軸にした切能「累」が披露されていく。また能と能の間にはユーモアたっぷりの狂言が。鬼殺隊の伝令係を描く「鎹鴉」、鋼鐵塚が登場する「刀鍛冶」が上演された。
鬼舞辻無惨役、竈門炭十郎役、鱗滝左近次役、天王寺松右衛門役の4役を務める野村萬斎は、役ごとに声色を変え、見事に演じ分ける。無惨に扮し、洋装で能舞台に現れた萬斎は、無惨が抱く生への強い執着をおどろおどろしい語り口で表現。炭治郎役の大槻裕一は炭治郎をはつらつと演じ、萬斎と力強い舞を、文藏と激しい立廻りを披露した。裕一演じる炭治郎と文藏扮する累が対峙する「累」では、演目「土蜘蛛」を彷彿とさせる糸を用いた演出が。ほかにも炭治郎の耳飾りや市松模様の着物、伊之助の猪頭を表現した面など、原作へのリスペクトを感じさせる表現が随所に見られ、「鬼滅の刃」の魅力が能・狂言の世界に落とし込まれていた。
開幕に際して、演出・謡本補綴も務めた萬斎は「今回の公演では、能 狂言を主軸に置きながらも、現代劇的なアプローチにもいくつか挑戦し今まで能楽堂ではできなかったことが能 狂言『鬼滅の刃』を通して、皆様にお届けできると思います。これまで能 狂言が培ってきた技法、人力で表現することの素晴らしさを是非体感していただきたいと思います」と手応えを語った。「能 狂言『鬼滅の刃』」の東京公演は7月31日まで観世能楽堂で実施されており、チケットは完売済み。大阪公演は12月9日から11日まで大阪・大槻能楽堂で行われる。
※竈門禰豆子の「禰」はネに爾、鬼舞辻無惨の「辻」は一点しんにょうが正式表記。
「能 狂言『鬼滅の刃』」
期間:2022年7月26日(火)~31日(日)
会場:東京都 観世能楽堂
期間:2022年12月9日(金)~11日(日)
会場:大阪府 大槻能楽堂
原作:吾峠呼世晴「鬼滅の刃」(集英社ジャンプ コミックス)
監修:大槻文藏
演出・謡本補綴:野村萬斎
作調:亀井広忠
原案台本:木ノ下裕一
制作:OFFICE OHTSUKI
協力:集英社(「週刊少年ジャンプ」編集部)
制作協力:万作の会
キャスト
シテ方:大槻文藏、大槻裕一、赤松禎友、武富康之、齊藤信輔、稲本幹汰
狂言方:野村萬斎、野村裕基、野村太一郎、深田博治、高野和憲、内藤連、中村修一
ワキ方:福王和幸、福王知登
囃子方:竹市学(笛)、飯田清一(小鼓)、成田達志(小鼓)、亀井広忠(大鼓)、原岡一之(大鼓)、林雄一郎(大鼓)
※福王和幸と福王知登、飯田清一と成田達志、亀井広忠と原岡一之は交互出演。
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