漫画BANKの運営者を摘発、中国での行政処罰が確定

漫画BANKなど複数の海賊版サイトを運営し、マンガ作品を権利者に無断で配信していた重慶市在住の男性1名に対し、中国の重慶市文化市場総合執法総隊は情報ネットワーク伝達権保護条例違反として6月15日に1万6409.52元(約33万円)の犯罪収益没収および3万元(約60万円)の罰金の行政処罰を下した。

これは6月21日に重慶市万州区人民政府のサイトで発表されたもの。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、日本人向けのマンガの海賊版サイトを運営者していた人間に対して、海外で処分が下されるのは今回が初めてとなる。

漫画BANKは日本のマンガ作品がストリーミング形式で読めた海賊版サイト。2021年11月に閉鎖したものの、ABJの試算によると「開設期間中(2019年11月~2021年10月)の合計アクセス数は9億9370万に達し、タダ読みされた金額はコミックス販売価格換算で2082億円相当にのぼる」とされている。

KADOKAWA、講談社、集英社、小学館の出版社4社は、漫画BANKが利用していたサーバ会社など海外のサービスに対し、米国裁判所において情報開示命令を取得。開示された情報は、漫画村事件の際も尽力した福岡県警察のアドバイスも受けつつ、精査・分析を行った。ここから明らかになった米国の通信社などに対しても情報開示申立を行うなど、複数の情報から運営者が中国の重慶市に居住していることを突き止め、中国に事務所を持つCODAに対処を要請。CODAから中国当局に対し、日本における甚大な被害状況および、その可罰性や摘発の重要性をまとめた申立書および各種情報提供に基づき、行政処罰申立てを行ったところ、これが受理された。

CODAは「中国で行政処罰を下すうえでの重要要件である『中国の公共の利益を侵害する』に該当するか否かが大きな焦点でありましたが、受理そして処分に至るなどCODAのこれまでの行政申立ての中でも異例であり画期的な事例といえます。また、現地弁護士事務所の見解によると、個人に対する処罰として罰金3万元は重いものであるとのことです」と今回の行政処罰を評価。しかし「被害額と比して処分が軽いと思われることから、今後、出版社4社およびCODAはこの侵害行為の全容解明に向けて情報収集に努めるとともに、出版社が受けた被害の回復手段についても検討してまいります」とした。