集英社ジャンプ系列誌が提供するデジタルサービスの最新情報を発信する、全3回のオンライントークイベント「ジャンプのミライ2022」。その第1回「ジャンプの現在位置」が、去る6月29日に開催された。
「ジャンプのミライ2022」は、少年ジャンプ+編集部による「ジャンプアプリ開発コンテスト 2022」の関連イベント。第1回にはモデレーターとしてアルの代表取締役けんすう氏、スピーカーとして少年ジャンプ+の細野修平編集長、籾山悠太副編集長、司会として外資系IT企業で働くエンジニアのちょまど氏が出席した。トークは「『ジャンプ』とは何か~ジャンプアプリ開発コンテストに求める企画とは~」「『少年ジャンプ+』の最新状況」「『ジャンプルーキー!』の最新状況」「『MANGA Plus by SHUEISHA』の最新状況」というパートに分け、順に進められていく。
「『ジャンプ』とは何か」のパートでは、籾山氏がジャンプを「ヒット作創出の装置・エコシステム」と表現。ジャンプがヒット作を連発しているのには“仕組み”に理由があるとし、その仕組みで特にポイントとなる機能は「作家の発掘」「作家の成長」「作品のチューニング」「作品の人気拡大」の4つだと述べる。「作家の発掘」はマンガ賞や持ち込みに大きなリソースをかけていること。「作家の成長」は連載を獲得するまでに多くのステップを設けていることと、担当編集とタッグを組み、ほかの新人作家、編集者と競争すること。「作品のチューニング」は担当編集とタッグを組んでの競争を受けてや、アンケートで読者からのフィードバックをもらえること。「作品の人気拡大」は読者数が圧倒的なため、作品内容が面白ければ話題が広がり、さまざまなメディア化でヒットが拡大していきやすいこと。籾山氏は「作家の発掘」の説明で、「持ち込みやマンガ賞に作家を集めるのには、ジャンプで描きたいと思ってもらえる場所作りも重要です。例えば、ジャンプでは新連載は等しく表紙とします。雑誌の売り上げが落ちるとしてもです。どれだけ売り上げが上がっても、完結済みの作品を大きく取り上げることはありません。ジャンプ+も同じ気持ちでやっておりますので、ほかのマンガアプリでは過去の名作を押し出して読者を集めることも一般的ですが、ジャンプ+ではそれをしません」と明かした。
「『少年ジャンプ+』の最新状況」のパートではまず、細野氏が少年ジャンプ+について「『ジャンプを越える』というコンセプトでスタートした」と説明。現在、少年ジャンプ+のDAU(デイリーアクティブユーザー)はアプリ内だけで185万、WAU(ウィークリーアクティブユーザー)は395万、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は550万、DL数は2100万。Webを含めるとDAUが220万、WAUが545万、MAUが1050万となる。70作品を連載中で累計連載作は341作品におよび、ページ数としてはジャンプの2倍程度配信しているという。しかし細野氏は「現在、ジャンプを超えることはできてない。少年ジャンプ+のさらなる課題が見えてきた」とキッパリ。その課題とは“ヒットを作るための仕組みを作ること”だそう。具体的には「ヒットのグロース・サイクルを加速するには?」「アンケートシステムを超えたい!」「最新話をもっと盛り上げたい」という課題とのことで、それらを解決するアイデアを「ジャンプアプリ開発コンテスト 2022」で募集したいとアピールした。
「『ジャンプルーキー!』の最新状況」のパートでは、籾山氏がジャンプルーキー!について「ジャンプが持つ4つの機能の1つに『作家の発掘』があると先ほどお話ししましたが、ジャンプルーキー!は『作家の発掘』を持ち込みやマンガ賞だけでなく、ジャンプとして更に強化したいと考えて始めたサービスです」と紹介。そしてジャンプルーキー!の最新の数字を発表する。累計投稿作品数は5万422作品を突破、累計投稿話数は18万3883話を突破。週刊少年ジャンプの掲載作家は11人、ジャンプコミックス刊行作家は59人、少年ジャンプ+の連載作家は70人輩出し、ジャンプ各紙のデビュー数は合計243人におよぶ。近年話題になった「タコピーの原罪」の作者・タイザン5もジャンプルーキー!出身だ。またジャンプルーキー!のさらなる挑戦として、広告収入を100%投稿者に還元することを2018年より始めたとのこと。籾山氏は「ジャンプルーキー!は少しでも力ある作家さんに活用してもらうのが主な目的。なので希望者に思い切って広告を100%お支払いする方針としたところ、2、3倍に投稿が増え、その後の作家発掘につながりました」と述べる。さらに毎月行われる連載争奪ランキングで1位になると、ジャンプ+での連載権をもらえるという取り組みについても説明。こちらは「編集部のネームチェックを経ずに連載できる」こと、「閲覧数に応じて原稿料+αが変わり、最大1ページ2万円をもらえる」ことが特徴だと話した。
「『MANGA Plus by SHUEISHA』の最新状況」のパートでは、籾山氏がMANGA Plus by SHUEISHAとはどんなサービスかを説明する。MANGA Plus by SHUEISHAはジャンプ+編集部が3年前より始めた海外向けのマンガ配信サービスで、現在「ONE PIECE」や「SPY×FAMILY」など45作品が連載中。日本と同時に最新話が更新され、英語、スペイン語、タイ語、インドネシア語、ポルトガル語、ロシア語、フランス語の7言語に対応している。籾山氏は「新しいヒットマンガを創出するための、今の時代に沿った新たなジャンプの仕組みとして、世界的に人気のマンガを生まれやすくしていきたいという狙いで運営しています」とコメント。昨今海外でもマンガの市場は大きく拡大しており、例を挙げると「ONE PIECE」の累計発行部数は昨年の段階で国内が4億部以上を誇り、海外が9000万部を突破した。累計発行部数の2割弱が海外ということになり、籾山氏は「現在の伸びや周りの状況環境の変化を考えると私個人としては、10年後には海外の割合が5割になるのではないかと予想しています」と分析する。海外でマンガの売り上げが伸びている大きな理由として挙げられるのは、NetflixやCrunchyrollなど動画配信サービスの普及によるアニメ視聴の広がりだそう。アニメに関しては昨年すでに海外市場が国内市場を上回っており、「アニメ化を果たすには海外人気が重要」になっていることを示しているという。そこで、マンガの市場としても海外の重要性が高まったと籾山氏は話す。
ここで籾山氏は2023年以降、少年ジャンプ+の新連載はすべて、MANGA Plus by SHUEISHAにて英語でも全世界同時連載されることを発表。さらに今後、海外のクリエイターによるプラットフォームをMANGA Plus by SHUEISHAに開設予定であることも明かされる。籾山氏はMANGA Plus by SHUEISHAの今後の目標について、「5年後に『MAU1000万人』『人気作の最新話の読者数が500万人』。そして人気作を日本と海外で毎週1000万人に読んでもらうことを目指したい」とコメント。そして「『MAU1000万人』『人気作の最新話の読者数が500万人』という5年後の目標、全世界を対象にヒット作を生んでいく目標を達成するには、さらに知見や新しいアイデアを持つ方々の力をお借りしたいと考えています」と述べ、「ジャンプアプリ開発コンテスト 2022」の募集を呼びかけた。