仏アニメ「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ・カラースクリプト公開
夢枕獏・谷口ジロー原作によるフランスのアニメ映画「神々の山嶺(いただき)」のスケッチ画、絵コンテ、カラースクリプトが公開された。
「神々の山嶺」は「登山家マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」という登山史上最大の謎に迫りながら、孤高のクライマー・羽生と彼を追うカメラマン・深町が冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む物語。谷口は生前「全身全霊を込めて描き上げた作品だからアニメーションで映画化されるのはとても嬉しい」と喜んだという。フランスの製作チームのもとを2度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていた。
プロデューサーの1人であるステファン・ローランツは「誰もが谷口ジローの作品に敬意を抱いていて、彼をがっかりさせたくない、という強い思いがありました」とコメント。製作陣は緻密な谷口の画力を受け継いだ写実的な表現を追求し、その真に迫ったリアルさをキャラクター造形にも取り入れた。
監督を務めたパトリック・インバートは原作を大きな指針としながらも距離を置き、エベレスト登頂に成功した人らの協力を仰いで寒さの感覚、テントの中で寝たときの風の轟音、ロープの結び方、息切れの仕方に至るまでリアルにこだわった。「漫画の原作はあらゆる創作の拠り所にはなったが、漫画を再現するのとは違う作業が待っていた。谷口の絵には細かいディテールが描き込まれていて、それをそのままなぞるつもりはありませんでした。線の数を減らしたことで、かえってアニメーターは顔の表情に集中することができました。2Dでリアルな顔を描くには、目の位置などの細かい精度が要求されます。片目が少しずれているだけで、観客に違和感を与えてしまいますから」と話している。
葛飾北斎、小津安二郎、今敏、高畑勲、宮崎駿らから大きな影響を受けながら、逆光や構図のバリエーションなどあらゆるテクニックを使ってスクリーンに没入できるよう試行錯誤を重ね、谷口が死去する直前の2016年に脚本と下絵を見せた。「とても好意的な感想でした。そもそも彼の作品も小説の漫画化なので、翻案という作業を尊重してくれていることが伝わってきました」とプロデューサーで脚本も担当したジャン=シャルル・オストレロは述懐。谷口の感想に胸を打たれたことを明かした。「神々の山嶺」は7月8日に公開される。
アニメ映画「神々の山嶺」
2022年7月8日(金)に新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開
監督:パトリック・インバート
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹き替えキャスト:堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美
(c) Le Sommet des Dieux – 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma