あのマンガの裏には、どんな音楽があったのか?
マンガ家に自身と作品を支えた楽曲を紹介してもらう本コラム「あのマンガに音楽を添えて」では、「あの作品の執筆中に聴いていた」「やる気を出したいときに聴く」「マンガの制作に影響を与えた」といった問いから、マンガ家と音楽の関係をあぶり出す。
第4回には、今年の1月に約9年の連載に幕を下ろした「薔薇王の葬列」の作者・菅野文が登場。本日6月16日に最終巻が発売された「薔薇王の葬列」を支え続けた楽曲たちを教えてくれた。世界観に大きな影響を与えたというBUCK-TICK、“人生の支え”だという宮本浩次など、「薔薇王の葬列」を形作る一端になった音楽たちを紹介する。
ヘッダーイラスト / ボブa.k.aえんちゃん 構成 / 粕谷太智
BUCK-TICK「ROMANCE」
「薔薇王の葬列」構想初期からずっとテーマソング的に聴いていました。
美しく荘厳でうっとりするような悲劇が描きたいと思っていたので。
「薔薇王」一部ラスト(7巻ラスト)のイメージです。
この曲だけでなく、BUCK-TICKの曲がなければ「薔薇王」という作品が成り立たなかったほど世界観に影響を受けています。
椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」
「薔薇王」二部、原案「リチャード三世」部分にあたるターンに入ってから個人的テーマソングにしていました。闇に突き進んでいくけれど、派手で力強く、歌詞の通り笑い飛ばす感じの積極的破滅ソングみたいなものが欲しくて、そういう歌をよく聴いていました。
デュエットなのでキングメイカーとふたりでやっていく感じもぴったりだなと。
余談ですが私はエレカシ(宮本浩次)の曲を人生の支えにしているので、落ち込んだりしたときは延々エピックソニー時代や東芝EMI時代のエレカシを聴きまくるというのが定番になっています。
ビリー・アイリッシュ「you should see me in a crown」
タイトルはBBC製作のドラマ「シャーロック」に登場するモリアーティのセリフらしいのですが、歌詞や雰囲気が「薔薇王」にも似合うかなと。
「薔薇王」のネームをするとき世界観に没入するために聴いていて、この曲からプレイリストが始まるのが定番でした。
出だしで一気にダークな気持ちになれて最高です。
「What Is A Youth?」(1968年公開「ロミオとジュリエット」より)
ネーム中、映画やドラマのサントラはものすごくたくさん聴きます。描いている作品の内容に近い作品のサントラをいくつか選んでプレイリストを作ることが多いです。
「薔薇王」のときはヨーロッパ歴史大河系のサントラが多く、壮大で勇ましい音楽もよく聴いていたのですが、この「ロミオとジュリエット」の曲はシェイクスピアということもあり、最初から最後まで聴き続けていたので代表として選びました。
美しくて切ない大好きな曲です。
菅野文(カンノアヤ)
1980年1月30日東京都生まれ。朝基まさしのアシスタントを経験した後、2001年に花とゆめ(白泉社)にて「ソウルレスキュー」でデビューを果たす。短編作品をいくつか発表した後、2006年、別冊花とゆめ(白泉社)で「オトメン(乙男)」の連載をスタート。同作のタイトルは流行語となり、2009年にはTVドラマ化されるなどヒットした。2013年、月刊プリンセス(秋田書店)で「薔薇王の葬列」を連載開始。2022年1月に完結を迎えた。同作はTVアニメ化、舞台化も果たした。現在、「薔薇王の葬列」の番外編となる「『薔薇王の葬列』外伝」が月刊プリンセスで連載されている。