犬王、湯浅政明が作品に込めた熱い気持ち「室町なめんなよ!と思いながら作った」

「犬王」初日舞台挨拶の様子。左から柄本佑、森山未來、アヴちゃん、津田健次郎、湯浅政明。

劇場アニメ「犬王」の初日舞台挨拶が本日5月28日に東京・新宿バルト9で開催され、犬王役のアヴちゃん(女王蜂)、友魚役の森山未來、犬王の父役の津田健次郎、足利義満役の柄本佑、監督を務めた湯浅政明が登壇した。

「犬王」は室町の知られざるポップスター・犬王と相棒の琵琶法師・友魚を描いたミュージカルアニメーション。アヴちゃんは「試写会で映画を観た人から『(犬王は)アヴちゃんじゃないとできなかったんじゃないか』と言われたんです」と胸を張り、「私もこの作品に運命を感じましたし、私がやらなあかん役や!と思って演じることができました。自分の中で新しい人格、キャラクターが生まれたような感じがしましたね」と語った。

森山は「日本には口承文化があったことを考えると、それを伝える役割を(友魚のような)琵琶法師も担っていたはず。琵琶を習いに行ったんですが、ギターに近いけどもっと感覚的なものだと感じました。弾くだけではなく歌うのもセットなんです。そして自分が鳴らした音に対して、どんな音の声を当てるかが大事」と話し、楽器の旋律と歌が一体化するような体験をしたと明かす。今回さまざまな音楽ジャンルを参照したという湯浅は「歴史を振り返るとき、現在に残っている物だけでその時代を考えることに違和感がありました。たくさんの人たちが、生きていくために必死でいろんなことをやっていたはず。大らかで、カラフルで、本作にはロックな要素も入れましたが、あの時代にいわゆる現代的なものがあってもおかしくないと考えています。人々はきっといろんなことができたし、やっていたし、室町なめんなよ!と思いながら作っていました」と熱い思いを口にした。

津田は「まだ映像ができていない状態で声を入れたんですが、できあがりを観たら湯浅ワールド全開でしたね。こうなりましたか!と面白かったですし、豊かな作品になっていました」と作品の感想をコメント。柄本は「義満の雅な感じと、ヒリついた感じの高低差を考えながら演じました」と述べ、自分自身と義満の似ている点を尋ねられると「ええっ……顔がちょっと似てるなって。だから僕が演じるしかないなって思いました(笑)」と客席を笑わせた。

またアヴちゃんは「この作品における友愛の描き方はある意味ドライで、そこに現実味がある」「犬王にはシンパシーを感じるし、一緒にいたいという気持ちです」と話し、「女王蜂として小さいライブハウスでパフォーマンスをしていたときは、喉が潰れるぐらいで歌うのが大事だと思っていました。室町時代にはマイクがなかった。だから収録では野外でも後ろの人まで届くように、マイクが壊れるくらいに“歌喧嘩”していました」と回想。すると森山が「ネタバレになってしまうから今は言えないけど……作中で犬王が今も現存する、ある場所を使っているんです。アヴちゃんにはマジであの場所でパフォーマンスしてほしいです。やっているところが想像できる!」と提案し、アヴちゃんを喜ばせた。

最後には湯浅監督が「室町時代に生きるキャラクターに(キャストの)皆さんが命を与えてくださった。当時生きていたであろう人たちのことを垣間見て、2人の名前も覚えて帰ってもらえたら。後半はミュージカルのようになっているので、歌詞に注目してもらえたら、より楽しめるのではないかと思います」とアピール。舞台挨拶は幕を閉じた。

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