宮崎駿の“漫画映画”の魅力に迫る「未来少年コナン」展明日から、当時を振り返る座談会も

「『未来少年コナン』展ー漫画映画の魅力にせまる!ー」の様子。

企画展示「『未来少年コナン』展ー漫画映画の魅力にせまる!ー」が、明日5月28日より東京・三鷹の森ジブリ美術館にて開催。これに先立ち、本日5月27日に内覧会が行われた。

TVアニメ「未来少年コナン」は、宮崎駿の初監督作品。同展示では“漫画映画”の魅力をテーマに全26話で描かれた「未来少年コナン」を、ストーリーや登場する機械類、設定資料やイメージボードなどを用いて紐解いていく。内覧会の前にはジブリ美術館館主の中島清文氏らの挨拶に加え、「漫画映画の魅力にせまる」と題した座談会が実施された。まずは中島氏が約3年ぶりに内覧会を実施できたことを喜び「まず伝えたいのは、ジブリ美術館は元気です!(笑)」と挨拶。「2020年はほぼ営業できない1年間、21年も半分程度の稼働でした」と述べ、その間を支えてくれた協賛会社や三鷹市の協力に感謝する。

続けて中島氏は同企画展の開催について、安西香月館長が子供の頃に観ていた「未来少年コナン」を、今の子供たちにも観せたい、知ってもらいたいという思いから作られたと説明。展示内容について「『未来少年コナン』では、地震あり津波あり、戦争あり侵略あり、エネルギー問題あり、差別的な問題も描かれている。そういった問題を置いておいても、ワクワクする面白い動き、表情、心根の優しさが伝わってくるような表現がいろんなところにちりばめられてます。それはこのジブリ美術館にもつながってる。『未来少年コナン』の展示を見ていただくとともに、ここがそうした宮崎監督の思いを実現する場所であると伝えたいです」と語った。

そして日清製粉グループ本社総務本部広報部長の安達令子氏からの来賓の挨拶、協賛会社の紹介などが行われたのち、座談会「漫画映画の魅力にせまる」がスタートした。座談会には、アニメーション監督の富沢信雄、アニメーターの友永和秀、元テレコム・アニメーションフィルム代表取締役の竹内孝次が登壇。三鷹の森ジブリ美術館館長の安西氏による司会のもと、まずはそれぞれが「未来少年コナン」との関わりを説明する。

友永は「それまではロボットものしかやったことがなかったのですが、大塚(康生)さんと宮崎さんの作品を手伝って、まっとうなアニメーションを勉強させていただきたいと、作画に参加させていただきました」と自己紹介。日本アニメーション社内で原画を描いていたという富沢は、「『未来少年コナン』という作品は、自分の中で仕事を覚える時期に当たる作品で。この作品で勉強させてもらいました。この作品がなかったら今の自分がないなと思っているぐらいです」と同作に関われたことの意味を述べる。また制作進行として関わっていたという竹内は「当時のアニメは子供だましだという風潮があって。子供だましにならない作品を作ろうという流れで、漫画映画が出てきたんです」と振り返った。

そして「未来少年コナン」の制作当時にエピソードを展開。当時、アニメはリアル化する傾向があったといい、富沢は「荒唐無稽な部分も多いですけど、描く側としてはいかに本当らしく描くかに注力しました」と語る。それに対し竹内も「荒唐無稽な話を作るためには、細かいところでは嘘をついてない。火を起こしたり、物を食べたり、海に潜ったりとと、リアルな描写を積み重ねて、最終的に大嘘をつく。詐欺師と同じですね(笑)」と述べると、友永も「日常シーンをきちんと描いているから大団円で大嘘をつける。細かい表現を積み重ねることで現実感が出てくるんです」とうなずいていた。

さらに安西館長が「展示をご覧になってもらうとわかるんですけど、キャラクターのいろんな表情があって。今の整ったアニメとは違いますが、それはそれで勢いがあって楽しいんです」と語ると、友永は「宮崎さんは『面白ければ原画と違ってても通してよ』と言ってましたね」と明かす。その言葉に、竹内は「最近の宮崎さんではないね、完成度を求めるようになったから(笑)」と述べ笑いを誘う。すると安西館長は「制作途中で宮崎さんにも展示を確認してたんですけど、『そこ面白くない』って却下されました」と裏話を披露した。

展示の見どころについて、友永は「ハイハーバーの世界がどうなってるのかを改めて感じました。この中でキャラクターたちが自由に動けるんだなと」とコメント。また富沢は「キャラ表で、初期のコナンを見ていただくと楽しいと思います。全然違います(笑)」と語りながらも、「もしアニメ本編をまだ観てない方がいたら、ぜひ観ていただきたい。僕はジブリの人間ではないので言いますけど、今のジブリにはなくなってしまったものが観れますので(笑)」と冗談めかして語る。続く竹内も「(展示は)よくできてるけどはみ出してないんですよね。でも実際のアニメーションは画面からはみ出している。だから展示は展示として、全26話のアニメーションを観てほしいですね」と述べると、安西館長も納得しながら「ワクワクドキドキの面白い動きを観てほしかったんですけど、やっぱり止まっている絵はつまらないんですよね。ぜひ皆さんには展示をきっかけに映像も観ていただきたい」とアピールし、座談会を締めくくった。

「『未来少年コナン』展ー漫画映画の魅力にせまる!ー」では、宮崎監督流の“漫画映画の特徴”として、「キャラクターの魅力」「ドラマチック」「名セリフ」「SFらしからぬ乗り物の数々」「世界の構築」「よく動く」「ギャグとユーモア」「ありえないアクション」の8つのポイントを紹介。全26話のストーリーを1話ごとにあらすじやセリフを用いた展示パネルとともに解説し、特に“動き”に着目してほしい部分には動画も用意され、映像とともに作品を振り返ることができる。

またイメージボード、キャラクター設定、設定資料、絵コンテ、原画といった展示のほかに、バラクーダ号やロボノイド、のこされ島、インダストリア三角塔、ハイハーバーの模型もお目見え。また展示室の最後には、バックライトに浮かび上がるラナが登場し、展示を締めくくる。同企画展は明日5月28日から2023年5月まで実施。三鷹の森ジブリ美術館は日程指定の予約制となっており、チケットはローチケWebにて毎月10日に翌月入場分が販売される。

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