「ダーウィン事変」がマンガ大賞受賞、担当編集「1話を使って拡散してもらえれば」
マンガ大賞2022の大賞が、うめざわしゅん「ダーウィン事変」に決定。結果発表と授賞式が本日3月28日に東京・ニッポン放送イマジンスタジオにて行われた。
マンガ大賞2022の結果発表に先立ち、昨年大賞に輝いた山田鐘人原作・アベツカサ作画による「葬送のフリーレン」の担当編集・小倉功雅氏がステージに登壇。昨年のマンガ大賞受賞について「おかげで作品を認知していただいて、多くの人から感想をいただいたりと環境が変わりました」と感謝の言葉を述べる。また山田・アベも受賞を喜んでいたと語り、「喜びを顕にするタイプの方々ではないですが、ありがたいというお話をしています」と明かした。
その後、小倉氏からマンガ大賞2022の大賞作品が発表され、ステージにうめざわの代理として「ダーウィン事変」の担当編集を務める寺山晃司氏が登場した。受賞の感想を問われると「もう純粋にとてもうれしい、という気持ちでいっぱいです」と笑顔を浮かべる。「担当としては面白い作品だと思っていますしどこかで願ってはおりましたが、まさか大賞をいただけるとは。うめざわ先生にもお電話して伝えたところ、ものすごくびっくりしてました」と、受賞の連絡を受けた当時を振り返った。
そして寺山氏はうめざわからのコメントを代読。「まさか大賞に選ばれるとはつゆほども思っておらず、驚きました」「これもひとえに私の幸運のお陰だと自負しております。その幸運の中身はというと、粘り強く物語作りにつき合ってくれる編集さんや優秀な作画スタッフさんなど多くの人に恵まれたことですから、名誉は皆で山分けにします。最後に読者の皆様に心より感謝を。」とメッセージを送った。
「ダーウィン事変」の始まりについて、寺山氏は「最初は『ダーウィン事変』のプロトタイプになるネームを見せていただいて、そのうえでうめざわさんからこの物語でどんなことが書きたいのかを聞かせてもらいました」と語り、同作で描かれる「人間と動物の生存権」というテーマについては、最初から決まっていたと明かす。またうめざわがかなりの量の文献を読み込んだうえで、それを作品の中に落とし込んでいることについて「単純に舌を巻きました。なおかつ調べたものを、人とチンパンジーの間のに生まれた“ヒューマンジー”という存在に落とし込んでいるのがすごいと思いましたね」と語る。
さらに作品の舞台をアメリカにした理由について、「差別やテロといったものが作品のテーマとして出てくるので、登場人物たちがには活発に議論してほしい。そうすると日本よりアメリカが舞台のほうがリアリティを持って捉えられるんじゃないか」と述べ、「ヒューマンジーという大きな嘘が据えられている分、ほかの部分はリアルに描こうと考えた結果ですね」と裏話を披露。しかしうめざわはもとより、編集やスタッフの中にはアメリカで生活をした経験者はいないと言い、「うめざわさんは洋画や海外ドラマがお好きで、そういったものからアメリカ像を膨らませて描かれてます。私も行ったことはないですし、アメリカに詳しくないメンツで作っておりますので細かいところはご容赦ください、と今のうちからお伝えしておきます(笑)」と苦笑した。
また人間とチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”である主人公・チャーリーについては、プロトタイプからデザインが変わったと言い「プロトタイプのときはかなりリアルに描かれていたんですが、それだと怖すぎるんじゃないかという話をさせていただいて、今のデザインに落ち着きました」と明かす。さらに審査員のコメントの中に「令和の『寄生獣』」という言葉があったことを司会の吉田尚記アナウンサーから指摘されると、寺山氏は「バレたなと思いました(笑)。うめざわさんももともと読まれていて、アフタヌーンがお好きだったみたいで」と語った。
「ダーウィン事変」は連載開始時に第1話の原稿データをクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとで提供したという経緯がある。これについて吉田アナウンサーが画期的なアイデアだったと称えると、寺山氏は「とにかく多くの人に読んでもらえることなら全部やろうということで、その1つでした。社内の人間からは『寺山ならやりそうだよね』みたいなことを言われ(笑)。私は今までやられてこなかったことをやるのが好きなんですよね。少しでも目立つためならなんでもやりたいなと思うので」と答え、「今回の受賞ニュースでもぜひ1話を使って拡散してもらえれば」とアピールした。
さらに記者からの「ほかの候補作品と比べて唯一無二だと思うところは?」と問われると、「いろんな楽しみ方があるところなのかなと思ってます。テーマに興味を持つ人がいればアクションシーンが爽快だという人、チャーリーというキャラクターを面白がってくれる人、なぜチャーリーが生み出されたのかを謎解き的に楽しむ人。いろんな楽しみ方をしていただけたことで、1位を取れたんじゃないかなと」と持論を語った。そして「うめざわさんも私も、何より面白いと思ってもらいたくて描いていますので、肩肘張らずに読んでもらえたらと思っております」と読者へのメッセージを送った。
うめざわしゅん受賞コメント
この度は大変名誉ある賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。
これもひとえに私の幸運のお陰だと自負しております。
その幸運の中身はというと、粘り強く物語作りにつき合ってくれる編集さん
や優秀な作画スタッフさんなど多くの人に恵まれたことですから、名誉は皆
で山分けにします。
最後に読者の皆様に心より感謝を。
自分の作品ながら『読むのにパワーの要る漫画だなぁ』と常々思って描いて
いるので、つき合ってくれている読者の方々は本当に有難い存在です。
まだしばらく物語におつき合いいただければと思っております。
マンガ大賞2022最終結果
大賞 うめざわしゅん「ダーウィン事変」(74ポイント)
2位 藤本タツキ「ルックバック」(68ポイント)
3位 真造圭伍「ひらやすみ」(66ポイント)
4位 和山やま「女の園の星」(63ポイント)
5位 魚豊「チ。―地球の運動について―」(59ポイント)
6位 稲垣理一郎・池上遼一「トリリオンゲーム」(55ポイント)
7位 龍幸伸「ダンダダン」(53ポイント)
8位 赤坂アカ・横槍メンゴ「【推しの子】」(49ポイント)
9位 たらちねジョン「海が走るエンドロール」(45ポイント)
10位 松虫あられ「自転車屋さんの高橋くん」(32ポイント)