岩明均×室井大資の戦国時代劇「レイリ」が、第3回さいとう・たかを賞受賞

「レイリ」1巻

岩明均原作による室井大資「レイリ」が、第3回さいとう・たかを賞を受賞した。

「レイリ」は、「寄生獣」「ヒストリエ」の岩明と「秋津」などで知られる室井がタッグを組んだ作品。百姓の娘ながら戦国武将・武田信勝の影武者として生きることになった、少女・レイリの姿を描く戦国時代劇だ。別冊少年チャンピオン(秋田書店)にて連載され、単行本全6巻が発売中。

岩明は「私は自ら作画しての漫画も描くのですが、この『レイリ』に関しては初めから、自分での作画・作品化は無理だと思いました」「今回本作を評価いただいた事、1人作業の時には無い感慨、喜びを感じています。本当にありがとうございます」とコメント。また作画を担当した室井は「レジェンドでありつつ、現役最前線で戦い続けている先生方に、『レイリ』を選出していただけたのは、とても光栄ですし、報われた気持ちになりました。ありがとうございます」と感謝を述べた。

受賞作品のシナリオライター、作画家、プロデューサーとしての担当編集者(または編集部)には、それぞれ正賞としてさいとう・たかをデザインによる「ゴルゴ13像」を進呈。シナリオライター・作画家のそれぞれには副賞として賞金各50万円が贈られる。なお2020年1月17日に授賞式を開催。また同日18時に公式サイト内の特設ページにて、最終選考会の会議録を公開する予定だ。

一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団が創設したさいとう・たかを賞は、シナリオと作画の分業により制作され、2016年9月1日から2018年8月31日の期間中に単行本第1巻が刊行された作品を顕彰するマンガ賞。選考委員にはさいとうのほか、池上遼一、佐藤優、長崎尚志やまさき十三が名を連ねた。

受賞者コメント

岩明均

私は自ら作画しての漫画も描くのですが、この「レイリ」に関しては初めから、自分での作画・作品化は無理だと思いました。アシスタントを使わない、というより人に上手く指示・指導ができない性分の私は、普段も「1人作業」でどうしようもなく遅筆となり、すでに進行中の他の1作品を作画執筆するとそれでほぼ手一杯になってしまうからです。時間はかかりましたが何とかシナリオを完成させた後は、秋田書店の沢さんに漫画家の人選など制作全体を仕切っていただき、漫画家の室井さんには私には無い持ち味を存分に発揮していただきました。今回本作を評価いただいた事、1人作業の時には無い感慨、喜びを感じています。本当にありがとうございます。

室井大資

岩明均先生をずっと尊敬していました。1990年、雑誌「宝島」のマンガレビューで、「寄生獣」っていうマンガがヤバいってレコメンドされてて、で、読んで。あんなに脳の汁が出る体験ははじめてでした。それ以来ずっと「岩明均」が好きで。ぜんぶ好きです。
だからほんとに、一緒に仕事できるのが信じられなくて、幸福でした。
「レイリ」という作品の座組みの中に混ぜてもらえて、本当によかった。
レジェンドでありつつ、現役最前線で戦い続けている先生方に、「レイリ」を選出していただけたのは、とても光栄ですし、報われた気持ちになりました。ありがとうございます。
この賞を機に、もっと多くの人に読んでもらえるとうれしいし、賞金50万円もうれしいです。
やはりフリーランスにとっての不労所得というのは何にも代えがたいものなのではないでしょうか。
50万、地味にうれしいです。何を買おうかわくわくします。ありがとうございます。岩明さんと沢さんもありがとうね。

沢孝史(編集者)

岩明均先生が12年の歳月をかけて完成させた原作を、一気に読ませていただいた日の感動を忘れることはできません。完璧な何かがここにあると確信しました。そして、室井大資先生という強烈な魅力を発するもう一人の作家が漫画作品としてあらためて生み出してくださった。圧倒的な才能が最高の原作と踊るダンスを目の当たりに出来た幸福。今、担当編集者として、完成した作品へ高い評価をいただけたことに、深い喜びと皆様への感謝を抱いております。

選考委員コメント

池上遼一

異才と言われる漫画家が、構想から12年の歳月をかけて書きためた原作にふさわしい、完成度の高い歴史ドラマに仕上がっている。
その奇抜なストーリーもさることながら、心理描写やアクションシーンの演出に特異な工夫があり、独特のリアリティーを感じさせる。
これも実力ある漫画家が作画を担当したゆえんか…。

佐藤優

完成度がとても高い。歴史に「もし」は禁物であるが、こういうことが十分あるように思えてくる。着地も優れていて読後感がいい。レイリのキャラクターもチャーミングで、大人の鑑賞に十分に耐えながら、子どもが読んでも楽しめると思える作品。

長崎尚志

なかなかの傑作。キャラクターもストーリーもすぐれている。死にたがっている人間を影武者にするという設定が上手い。
もう少し長く読みたかったが、終わり方がやや淡泊に感じた。

やまさき十三

主人公は女性ながら戦国武将の影武者という設定。
映画やドラマでもよく使われる設定にもかかわらず熱く爽快な青春物語に仕上がったのは、骨太の脚本と、それを静と動の息もつかせぬ迫力ある画面として仕上げた作画の力である。

さいとう・たかを

室井氏の他の作品は拝見していないが、まるでこのドラマを描くために創られたようなペンタッチの絵である。なかなか見せる。コマの運びもなかなかいい。

第3回さいとう・たかを賞

受賞作品

「レイリ」
マンガ:室井大資
原作:岩明均

最終候補作品(全5作品・作品名50音順、敬称略)

「アイとアイザワ」
マンガ:うめ(小沢高広・妹尾朝子)
原作:かっぴー

「前科者」
マンガ:月島冬二
原作:香川まさひと

「マイホームヒーロー」
漫画:朝基まさし
マンガ:山川直輝

「約束のネバーランド」
マンガ:出水ぽすか
原作:白井カイウ

「レイリ」
マンガ:室井大資
原作:岩明均