Boichi「ORIGIN」にみなもと太郎が「絶品です」、メディ芸大賞の経緯明かす
第22回文化庁メディア芸術祭の記者発表会が、本日3月1日に東京・Ginza Sony Parkにて行われた。コミックナタリーではマンガ部門とアニメーション部門の受賞作品発表時の様子をレポートする。
マンガ部門の大賞を受賞したのは、Boichi「ORIGIN」。会場にはBoichiと、通訳として妻が登壇した。Boichiは「『ORIGIN』は“守っていく人”の物語です。そして心を込めたものを守っていきたいという人が、この作品を作ってきたと思います」と周りの人々へ感謝を述べる。
マンガ部門の審査委員を務めるみなもと太郎は、本作について「(第22回文化庁メディア芸術祭)受賞作品展のチラシに『この作者はマンガの魅力、迫力、可能性その他を充分に知り尽くしています。絶品です』と私のコメントがありますが、これは審査で一番最初に数百冊の作品を読んでいったときにメモしていた言葉です」と述べ、「ほとんどの審査員が高得点をつけていて、やっぱりなと。すんなり大賞に決まりました」と明かす。またジャンルがSFロボットものということで、「我々が子供のときに慣れ親しんだ『鉄腕アトム』を継承した作品のように思いました」と印象を語った。
みなもと太郎は優秀賞や新人賞の作品についても言及。齋藤なずな「夕暮れへ」に対しては「メジャー志向とは正反対といえる作品ですが、しみじみとした優れた作品です」と、宮川サトシ原作による伊藤亰作画の「宇宙戦艦ティラミス」については「大賞の『ORIGIN』に引けを取らないほど高い画力を持っていながら、その画力を全部無駄遣いしている脱力マンガ」と評する。またコナリミサト「凪のお暇」については「孤独と寂しさを持つ主人公・凪さんに、等身大で寄り添っている。それが読者の共感を呼んでいる秀作」とコメント。紗久楽さわ「百と卍」については「今回の選んだ作品の中で、もっともの問題作でした」と述べながら、「同性愛というものは昔から当たり前のようにあった。だから、このような世界があるのは当たり前のこととして読者は読んでいかなくてはいけない」と語った。
新人賞の鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」については「マンガのいい効能のひとつとして、世代をつないでくれることを改めて感じさせてくれた」と称賛。ジュリー・ダシェ原作、マドモワゼル・カロリーヌによる「見えない違い─私はアスペルガー」には「アスペルガー症候群の苦しみは第三者にわかりにくいものだと思いますが、それを作者の体験をもとにして非常にわかりやすく伝えてくれた」と、黄島点心「黄色い円盤」については「怪作。商業主義とは一線をかくした作品」と述べた。
アニメーション部門の大賞を受賞したのは、Boris LABBEの「La Chute」。アニメーション部門の審査委員・横田正夫氏は本作品について「ループになった展開はアニメーションの特色を生かしたもの。人間が行う営為の全体を見事に描き切ってると思い、大賞にふさわしいと判断した」と説明する。また優秀賞や新人賞の作品について「人生の中の不得意な部分を象徴的に描いたものが多かった。それをわかりやすく示すということで、アニメーションの意味があったと思います」と総評した。
※Boris LABBEのEはアキュート・アクセント付きが正式表記。
第22回文化庁メディア芸術祭 受賞作品
マンガ部門
大賞
Boichi「ORIGIN」
優秀賞
宮川サトシ原作、伊藤亰作画「宇宙戦艦ティラミス」
コナリミサト「凪のお暇」
紗久楽さわ「百と卍」
齋藤なずな「夕暮れへ」
新人賞
黄島点心「黄色い円盤」
ジュリー・ダシェ原作、マドモワゼル・カロリーヌ / 訳:原正人「見えない違い─私はアスペルガー」
鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」
アニメーション部門
※カッコ内は作家名・受賞者名。
大賞
Boris LABBE「La Chute」
優秀賞
「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」(セバスチャン・ローデンバック)
「ひそねとまそたん」(樋口真嗣)
「ペンギン・ハイウェイ」(石田祐康)
「若おかみは小学生!」(高坂希太郎)
新人賞
「透明人間」(山下明彦)
「Am I a Wolf?」(Amir Houshang MOEIN)
「The Little Ship」(Anastasia MAKHLINA)