映画「ミスミソウ」監督が考える「ハイスコアガール」との違い、押切蓮介に語る

映画「ミスミソウ」のBlu-ray / DVD発売記念イベントの様子。左から内藤瑛亮監督、押切蓮介。

押切蓮介原作による映画「ミスミソウ」のBlu-ray / DVD発売記念イベントが、本日10月3日に東京・新宿バルト9にて開催され、押切と監督の内藤瑛亮が登壇した。

冒頭、2010年に連載スタートした「ハイスコアガール」を9月末に完結させたばかりの押切は「ずっとハイスコアガールモードだったので、今日からミスミソウモードに切り替えます」と表明。近況について「最近は堕落してますね。燃え尽き症候群にかられてます。もう連載も1本だけなので、引きこもって映画ばっか観てます」と明かす。

本作についての周りの評判を聞かれると、押切は「アニメの『ハイスコアガール』の声優さんは固まってました。『同じ作者とは思えない』って」とコメント。押切の自宅でキャストたちとアニメの鑑賞会があったそうで、「アニメが始まる前、『ミスミソウ』を観てたんですよ。でも、ちょうど流美ちゃんと相場くんが戦うシーンで「ハイスコアガール」の放送が始まっちゃって。それが終わった瞬間に、映画のほうを再開したんですけど混乱してました」とエピソードを披露する。

ここで内藤監督が、「ミスミソウ」と「ハイスコアガール」は“自らへ寄せられてる思いに、全員がそれぞれ気付いていない”ところが似ていると言及。「それゆえに物語が展開していくんですけど。たまたま握ったのがナイフかゲームのレバーか。ささやかな違いかな、と(笑)」と見解を示した。

原作を映画に落とし込むにあたり、内藤監督は「予算的にどうしても無理というところ以外、原作に忠実に描写しようということを指針にしてました」と言う。異なる部分については「雪の上で戦うシーンが実写にするにはヘビーで。まず足が重くて動かないんですよね。だから映画では、その足の重たさを生かしたアクションにしていこうと設定しました。彼らも決してプロフェッショナルな殺し屋ではなく、普通の中学生。リミッターが外れたからこその過剰さと考えてたので、超人的な動きは基本的にはしないんです。ただ春花だけは怪物かのように描こうと思ってたんですけど」と述べる。また雪に血が飛ぶシーンをリテイクするのは大変だったと内藤監督が苦労をこぼすと、押切は「マンガだと修正液使えば終わりなんですけどね」と言いながら労った。

DVDにはメイキングシーンも収録されており、押切と内藤監督の初対面のシーンも収められているそう。押切は「僕が5分で逃げ帰ったやつです」と、現場に訪れたものの寒すぎて嫌になったと述懐する。内藤監督が「人見知り同士なので、2人とも一切目合わせてないんです(笑)」と話すと、押切は「(内藤は)完全に監督モードに入ってたので近寄れなかったんです。現場の弁当食べるのも許してくれないぐらい」と明かした。

後半では押切と内藤監督、それぞれの今後の活動についてトーク。内藤監督は新作「許された子どもたち」の仕上げ中とのことで「これもイジメが題材で。『ミスミソウ』は創作性が高い作品なんですけど、次回作はリアリスティックな視線で描いていく作品になります」とアピールする。押切は「僕の人生のピークはたぶん今年だったんですよ。もう1段階上がるために努力しなきゃいけない時期なんですけど、マンガに対するモチベーションがなかなか上がらない」と嘆きながら、「辛辣なものも久しぶりに描きたいなと思ったんですけど、すっかり『ハイスコアガール』の熱にやられて黒いものがどんどん浄化されていく」と語る。ブラックな性格だと自称する内藤監督に、「また飲みましょうよ。僕の黒いものを蘇らせてください」とお願いした。

最後に内藤監督は、本作について「公開のとき、自分にとって代表作になると言ってたんですが、その思いは変わってなくて。これから自分が作品を作り続けて、10年とか経ったときにも『ミスミソウ』がひとつの転機だったなと思える作品になっています」と締めの挨拶。押切は「僕も監督と同じ意見です」とまとめ、イベントは幕を閉じた。

「ミスミソウ」は田舎町を舞台に、クラスメイトのいじめで家族を失った少女・野咲春花の復讐を描くホラーサスペンス。なおイベントでは、10月27日にスペインで開催される「サンセバスティアン ホラー&ファンタジー映画祭」に本作が出品されることも明らかになった。

(c)押切蓮介/双葉社 (c)2017「ミスミソウ」製作委員会