「コナンは光、安室は闇」名探偵コナン「ゼロの執行人」制作秘話を監督ら明かす

「監督・プロデューサーが語る 映画『名探偵コナン ゼロの執行人』ができるまで」の様子。

「監督・プロデューサーが語る 映画『名探偵コナン ゼロの執行人』ができるまで」と題した公開講座が、6月28日に東京のデジタルハリウッド大学・駿河台キャンパスにて行われた。

本講座には映画「名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)」で監督を務めた立川譲、プロデューサーの諏訪道彦、デジタルハリウッド大学教授の高橋光輝が登壇。講義の冒頭では高橋教授から「この映画を5回以上観た人」という質問がされ、会場に詰めかけた人の手がほとんど挙がった。中には「20回以上観た人」という質問に対し手を挙げる人も登場し、会場に作品のディープなファンが集っていることをうかがわせる。

「名探偵コナン」の劇場シリーズ1作目「時計じかけの摩天楼」から関わる諏訪は、開始当初はここまでシリーズが続くとは考えていなかったといい、記念すべき20作目の「純黒の悪夢(ナイトメア)」は「20周年だしイベントとして、思いっきりがんばろう」と心に決めたと述懐。そこで作品が大ヒットし、安室透というキャラクターの受け入れられ方に驚いたことで、当時まだ内容が固まっていなかった22作目で安室の物語を描くことを決め、「ゼロの執行人」が生まれたと振り返った。

「ゼロの執行人」のテーマについて、立川監督は「コナンは光、安室は闇として描いていて、(観ていくうちに)闇の中にも光があるとわかることになるけど、対比構造をなるべく作るようにした」と話す。映画制作時の資料を取り出しながら、海辺の電話ボックスのシーンを挙げ「仕事に疲れた安室が、上がってきた朝陽を見てホッとした顔をするんですけど、その朝陽はコナンを象徴するものとして描いている。その朝陽に安室が照らされるという対比を表現している」と、演出意図を説明した。

さらに会場のスクリーンには、次々に設定資料や絵コンテなど貴重な資料の数々が映し出される。原作者・青山剛昌の「地球に落下する無人探査機『はくちょう』のカプセルが光ってほしい」というリクエストに応えるため、本来光らないカプセルの背後に月を描くといった苦労話や、監督からの「(ドアノブが)高すぎかな…」という指示が書かれた資料には会場から笑い声が上がっていた。

安室徹の資料では「本気モード」「通常モード」が目のハイライトによって描き分けられていることを説明。またコナンと安室が警視庁からエッジ・オブ・オーシャンへ向かうシーンは、本作の中でも見応えのあるパートだが、脚本では「悪魔のようなドライビングテクニックで切り抜ける」のひと言で片付けられているなど、ファン必聴の裏話が次々に飛び出した。安室と風見が日本橋で会話するシーンは、「日本を守ってる男っていうことで、シンプルに日本橋にした」と、立川監督から驚きの理由が告げられた。

また話題はアフレコの話へ。立川監督は「(高山)みなみさんはまんまコナンという感じなんで、『こうした方がコナンっぽくなるから、そうしていい?』などのアドバイスはすごく勉強になった」と称賛。諏訪氏も「(演出に)悩んだら最後は、高山(みなみ)さんとか山崎(和佳奈)さんにもう投げますよね。そのほうがキャラクター本来の声が出てきますから」と、キャストへの信頼を口にしていた。

興行収入83億円突破と大ヒットを記録している本作。立川監督は「監督を引き受けたときはプレッシャーを感じなかったけど、今になると、この先これを超えらえるのかっていうプレッシャーがありますね」と現在の心境を述べ、諏訪氏は「(興行収入)100億を目指すなんて話もSNSなんかで出てるけど、マジにそういうところを狙わなきゃいけないかな」とより上を目指す気持ちを見せていた。最後の質問コーナーでは会場に集まった同大学の学生たちに向けて、立川監督から「今こういう作品が流行ってるから作ろうじゃなくて、自分の好きなものを見て吸収して伸ばしていってほしい」とエールが送られた。